池上美桜さん:ドイツのいいところも悪いところも、田舎も都会も知れた10カ月
大学3年生の後期から1年休学し、2018年8月から2019年6月末まで10カ月のドイツ留学をされた池上美桜さん。
留学先として最初に選んだのはフライブルクにある語学学校ALPADIA。その後同校のベルリン校に移動し、フライブルクとベルリンという全く雰囲気の違う2つの街で留学生活を経験されました。
留学生活も残り1カ月をきったタイミングで、これまでのことを振り返ってもらい2つの街の違い、留学中に大変だったこと、留学をしてみて感じたなどお話を聞かせていただきました。
幼少時のドイツ生活とドイツ語への興味
―ドイツ留学のきっかけを教えてください
もともと1才から9才まで父親の仕事の都合でデュッセルドルフに住んでいたことがきっかけです。当時はインターナショナルスクールに通っていたのでドイツ語は全くしゃべれなかったのですが、その後もずっとドイツ語に興味があって語学力を上げたいという想いがありました。
―留学当初のドイツ語力は?
大学の2年生まで第二外国語でドイツ語の授業をとっていました。週2回で1回1時間半ずつです。1年生のときは文法中心でスピーキングはあまりやらなかったので、2年生になってからは自分ですすんでドイツ人の先生の会話中心の授業をとりました。
それでも語学学校ではA2レベルからのスタートでした。
1年生のときに文法をしっかりやっていたのはすごく役に立ちました。語学学校では文法は教科書に載っている内容をサラッとやって進んでいくので、そこで理解できないと後々大変そうなクラスメイトもいました。大学でやっていてよかったです。でも語学学校では文法用語もドイツ語で説明されるので、日本語との対応を把握するのが最初は大変でした。
アルパディアを選んだ理由が、授業中のスピーキングの割合が多点に魅力を感じてだったので、その点はよかったです。授業は会話が中心で、教材の中の色んなトピックに沿って自分の意見を言う練習をさせられるので、定型文の言い回しなども身についてよかったです。
フライブルクでの留学生活
フライブルクでは、まだ語学レベルも下のクラスだったというのもあるのかもしれませんが、学校で友達を作りやすかったです。街が小さいのでみんな友達を探しているし、遊びに行くにも友達みんなで遊ぼうということが多かったです。
最初は小さい街のほうが落ち着いて勉強できるかと思ってフライブルクを選びましたが、学生にとって娯楽が少ないような感じを受けました。
友達はいっぱいできましたが、みんなクリスマス前に帰国してしまったので1月は1人で街をぶらぶらするしかなくて。最後の1カ月は1人で山に登ったり散歩したりして過ごしました。
―ホームステイはどうでした?
ドイツに来て最初の4週間がホームステイでした。女性の1人暮らしのお宅で、ホストマザーは英語がしゃべれない方だったので強制的にドイツ語を使わなくてはいけない環境でした。
当時はまだドイツ語が全然できなかったので、言いたいことが思うように言えなかったり、相手が言っていることが分からなかったりと大変でした。
でも最初の1カ月で無理やりドイツ語アウトプットの機会を作れる環境じゃなかったら、ここまで上達も早くならなかったと思います。
その後移った学生寮では、香港人とアメリカ人の男の子とのシェアでしたが、それぞれのドイツ語力が違ったので、3人でしゃべるときはいつも英語でした。
最初からそういう環境になってしまうよりは、1カ月は無理やりでもドイツ語をしゃべらなくてはいけない、甘えられない環境に身を置けたので、語学上達の面では最初1カ月だけでもホームステイでよかったです。
―寮は男の子と3人暮らしですか?
フライブルクではそうです。上の階に仲良くしていたスペイン人の女の子がいて、みんな階を行き来していたので、男の子2人だから気を使わなくちゃ、ということはあまりなかったです。
ただ、キッチンがすごく汚くて。日本人だったら大抵の人が汚いって思うだろうけど、「いや、熱湯かけりゃ大丈夫」とか言われてそれで言い争いになったこともありました。
ルームメイト大事だなって思いました。清潔感がないときついです。
ベルリンの学生寮では来てからずっとスイス人の女の子と2人だったのですが最近イタリア人の女の子が加わって3人暮らしです。
ベルリンでの留学生活
活―ベルリンに来て、フライブルクと比べてどうですか?
私は東京育ちなのでベルリンの方が1人で行動できるところがたくさんあって楽です。
ベルリンはネットで調べると美味しいお店の情報などたくさん出てくるので、そういう意味ではベルリンの方がちょっと好きかもしれないです。
一方で学校は、ベルリンではそれほどクラスの子と仲良くなるかんじではなくて。みんな各々の生活があるので、みんな積極的に遊ぼうって感じにならないです。
授業の内容も上のクラスになると話題が自分のことよりも社会的なことになってくるので、お互いの話題になりにくいっていうのもあるのかもしれません。
ベルリンに来てからは1人で行動することが多くなりました。学校から帰って誰とも話さなくなってしまうので、友達を作るためにミートアップというアプリに登録しました。
ミートアップは共通の趣味やグループを見つけられて、そのグループの食事会などがいつどこであるというのが分かるアプリです。
それに登録をして、日本に興味のある人が集まる会に積極的に行ってそこで友達を作りました。
集まったみんなで大福づくりやたこ焼き、焼き肉をして、「日本でも会おうね」って約束するような仲のいい子もできました。
ベルリンでは自分から学校の外部に友達を作ろうとしないと、人としゃべる機会も減ってしまうと感じます。
お財布をなくした一大事
盗まれたのか落としたのかははっきり分かっていないのですが、お財布をなくしてとても大変な思いをしました。
警察に行って紛失届を出したいと言ったのですが、「こっちでは落とした場合見つからないことが多い」って言われて紛失届を出させてもらえなくて引き下がるしかありませんでした。
現金はお財布に入っていた分が全てで、クレジットカードも全部お財布に入れていたので、お金を引き出す手段がありませんでした。更にこっちで開設した銀行口座のカード再発行にも1カ月かかったのでその間全くお金を引き出す手段がなくて。
ルームメイトに100ユーロだけ借りて、1カ月100ユーロ生活をしましたが生きた心地がしなかったです。二度とあんな怖い思いはしたくないですね。
ドイツはそんなに治安悪いと思っていなかったし、フライブルクではそんな危険な思いをしたことがなかったのでベルリンも大丈夫だろうと思っていたら、ベルリンはスリがすごく多いと後から聞きました。同じドイツと思って安心していましたが、大都会は違うということ、自分の危機管理能力を残念に思いました。
その後の銀行の手続きなど全部ドイツ語でやらなくてはいけなかったのがすごくストレスでした。
あまりにも辛すぎたので、途中から「逆にこれは笑い話になるな」って思うようにしました。もともと割とポジティブな方ですが、この出来事は結構精神的に参りました。これはポジティブにとらえないと、1人で、しかもだれも頼れる人がいない状況ではやっていけないなと思って、できるだけ前向きにとらえようと気を付けました。自分のタフさが成長したと思います。
―ベルリンでもドイツ語は必要
ベルリンは英語ができれば生活に困らないって思っていましたが、銀行に電話すると「英語できますか?」って聞いても「できません」って言われることが多くて。そういうときに、ベルリンもドイツなんだと痛感しました。
始めてベルリンに来た時には、フライブルクに比べると周りからたくさん英語が聞こえてくるので「ベルリンて本当に英語ばっかりなんだ!」という印象でした。でも色々な手続きをするとなると思っていたよりみんな英語しゃべれないんだなと。これは実際にベルリンで生活してみないと分からないことでした。
色々なバックグラウンドの人たちとの出会い
留学中に出会う人たちはみなさん色んなバックグラウンドでドイツに来ている人たちなので面白いです。
みなさんそれぞれドイツにいる理由がバラバラですし、ドイツを選んでいるだけあってみなさんちょっと変わっているなって感じを受けます。個性的な人が多い印象ですね。
留学前はに考えていたこの先の自分のビジョンは、大学卒業して就職して日本に定住というものでした。でもドイツに来て日本人に限らず色んなバックグランドでドイツ語を勉強している人たちの理由を聞いて、「あっ、大学を卒業してすぐ就職しなくていいんだ」って。選択肢が広がりました。これは日本にいたら絶対得られなかった価値観です。
でも私は日本に帰ったら就職すると思います(笑)そこまで大胆にはなれないので。
留学中に帰国後の就活準備
今丁度、就活の時期なんです。(帰国して大学3年生の後期)6月1日でサマーインターンシップの応募が正式に解禁さましたが、私はまだ何もしていないので焦りがあります。
あまりにも就活何もしていない不安が大きかったので「とにかく動かないと」と思い、4月にロンドンキャリアフォーラムに行って来ました。
日本人バイリンガル向けの就職フォーラムで、2020年度卒(大学4年生)の人たちがそこで内定もらうのが本来の目的です。私は21年卒なので、インターンを探そうと思っていました。
インターンの募集は数が少ないのですが、その中で1社にだけ応募してその1社のためにロンドンに行きました。そして無事にインターンをいただくことができたので行ってよかったです!更に、会場でたまたま訪れたブースの会社からもお声がけいただいてもう一社インターンが決まりました。
留学当初はキャリアフォーラムに行くつもりもなかったのでスーツも持ってきていなくて、ドイツではスーツを準備するのも大変だったので、行くのを諦めようかとも思ったんですけど行ってよかったです。
自分で好きでやっていることとはいえ、履歴書を書いたり証明写真を撮ったり、ドイツでやると思っていなかったことをこなすのに毎日いっぱいいっぱいで。気持ちがブルーになったりしましたが、実際行ってすごくよかったので、行動あるのみですね。
日本に帰ってからいただいた2社でサマーインターンをさせてもらいます。
ドイツ留学を振り返って
ドイツ語を勉強したいという私の希望に対して両親が投資してくれたこともあって今回ドイツに来れたけど、留学中「このスキルを日本で使う機会はあるのかな」って自問することもありました。
でも英語ができる人は増えてきていて、英語圏に留学する人は増えている時代、そんな中でドイツ語選んだことでプラスにはたらくんじゃないかと願っています。日本人でドイツ語を留学してまで勉強している人はそんなに多くないと思うので、個性にはなると思っています。
先日ドイツ語のテストTelc B2も受けたので、それが今回の集大成です。学校でのクラスはC1です。A2から始めてB2までこれたら上々だろうと思っています。
これまで履歴書には独検3級しか書けなかったので、これでTelcが受かっていたら履歴書にも書けるので楽しみです。
日々すごく一生懸命だったので、自分が思い描いていた余裕のある留学生活はきなかった印象です。でもこうして思い返してみると、色々やっていたんだなと思えたのでよかったです。
今は帰国するのが楽しみです。
小さい頃デュッセルドルフに住んでいたときはその生活しか知らなかったので、留学前は漠然と「日本よりもドイツの方が好き」という想いがありました。その後日本での生活も経験して、今回11年ぶりにドイツに戻って来てみると,ドイツは自分にとって異国なんだって感じることが多かったです。
3月に、仕事の休みがとれた姉と一緒にデュッセルドルフに行くこともできました。母校や昔の家に行ったり、当時と全然変わっていないところもあればすごい変わっているところもあって、11年ぶりに姉妹でデュッセルドルフを楽しめました。ドイツ留学中でないと姉妹揃って行くのはむずかしかったと思うので、いい機会になりました。
今回留学にきて日本もドイツもどっちもいい面も悪い面もあって、それこそ田舎と都会でも違うというのを知れました。
ドイツの好きなところは、まず街並みは日本にはないものですし、古いものを大事にする意識が高いところ。午後の時間の使い方の自由度が高いと感じるのと、のんびりしているのがすごくいいですね。
フライブルクでは、街中ですれ違ったちょっと怖そうに見えるドイツ人のおじさん、おばさんでも挨拶するとすごい笑顔になってくれるのは嬉しかったです。こういうのは日本ではないですし、困っている人を助けるのも日本に比べるとドイツのほうがありますね。自分も話しかけることができるし、話しかけられることもあります。
ドイツの悪いところというより、自分に合わないのは、電車がよく遅れることやベルリンに来てからはちょっと治安がよくないこともあることですかね。あとは接客に愛想がないことです。
日本のご飯はどこに行ってもおいしいので、日本食が恋しいです。
いい意味でも悪い意味でも、小さな頃には気づかなかったドイツの新しい面を知れた10カ月でした。